Appleは2026年11月3日、iOS 27.3、iPadOS 27.3、macOS 27.3、およびvisionOS 27.3の初回デベロッパーベータ版とともに、すべてのサードパーティ開発者に向けてSiri AIデベロッパープレビュー(Siri AI Developer Preview)を正式に開放しました。
今回のアップデートにより、これまでサードパーティ製アプリに課されていた13種類の事前定義ドメインテンプレート(アシスタントスキーマ、Assistant Schemas)への適合制限が完全に撤廃され、あらゆる分野のアプリが独自のアクションやコンテンツをSiri AIへ直接公開できるようになりました。
システムレベルの言語モデルに複雑な業務ロジックを理解させるため、AppleはApp Intentsフレームワーク(App Intents)にツールインテントマクロ(@AppIntent(.tool))と生成可能エンティティマクロ(@AppEntity(.generable))を新設し、さらにオープン仕様agentskills.ioのサブセットを直接採用したアプリスキル(App Skills、すなわちSKILL.md)を導入しました。
5つの評価軸を備えた自動テスト評価フレームワーク(Siri Evaluations)もあわせて提供され、数カ月後にエンドユーザー向けの初期展開を開始し、2027年春にはApp Storeへの審査提出を受け付ける計画です。
一、13種スキーマ制限の完全撤廃
固定スキーマ時代の開発上の壁
2026年9月から10月にかけて提供されたiOS 27.0からiOS 27.2の期間中、Appleは刷新されたSiri AIをリリースしたものの、サードパーティ製アプリの連携には厳格な制限を設けていました。
開発者が自社のアプリをSiri AIに対応させるには、アプリのインテントをAppleが事前定義した13種類のアシスタントスキーマ(Assistant Schemas)に厳密に一致させる必要がありました。
この13種類の定義済みドメインは、ブック(.books)、ブラウザ(.browser)、カメラ(.camera)、ファイル管理(.files)、ジャーナル(.journal)、メール(.mail)、メッセージ(.messages)、メモ(.notes)、写真とビデオ(.photos)、プレゼンテーション(.presentations)、スプレッドシート(.spreadsheets)、システムとデバイス状態(.system)、およびワープロ(.wordProcessor)のみに限られていました。
そのため、フードデリバリーの配達状況確認、配車アプリのリアルタイム手配、レストランの座席指定予約、ECサイトの注文・返品、フライト運行情報の検索、銀行口座管理といった日常的に利用頻度の高い多くのサービスが、13種類の固定枠に収まらず連携から除外されていました。
2026年11月3日に配信された27.3 Beta 1はこの障壁を取り除き、開発者は業務ロジックを事前定義テンプレートに無理に当てはめる必要がなくなり、新たなシステム権限(Entitlement)の申請や追加のデベロッパープログラムへの加入も不要になりました。
既存のApp Intentsコードを再利用して拡張するだけで、あらゆるサードパーティ製アプリがSiri AIにカスタムアクションを登録でき、任意のカスタムエンティティをSpotlightのセマンティックインデックス(Spotlight Semantic Index)へ提供(Donate)できるようになります。

ツールインテントと生成マクロ
通常のアプリ内アクションを大規模言語モデルが理解・呼び出し可能なツールへと変換するため、AppleはAppIntentsフレームワークにツールインテントプロトコル(ToolIntent)と対応する@AppIntent(.tool)マクロを追加しました。
開発者がカスタムインテントの構造体に@AppIntent(.tool)属性を付与するだけで、Siri AIの推論モデルが対話の中で動的にそのインテントを認識して呼び出せるようになります。
もし既存のインテントが、ショートカット(Shortcuts)のみに対応しSiriには非対応だったドメインスキーマ(例えばジャーナルのエントリー作成.journal.createEntryやブックを開く操作.books.openBook)に準拠している場合、@AppIntent(.tool, schema: .journal.createEntry)のように組み合わせて宣言できます。
これによりショートカット用スキーマの恩恵を維持したままSiri AIからの呼び出しにも対応できますが、すでにSiriに対応しているスキーマ(メッセージ送信の.messages.sendMessageなど)に重ねて.toolを付与すると、Xcode 27.3のコンパイラがエラーを出力してビルドを阻止します。
また、データベース内の既存レコードを事前に検索するのではなく、ユーザーの自然な一言から複数の構造化された検索条件を抽出したい場面に向けて、生成可能エンティティプロトコル(GenerableEntity、一時的エンティティTransientAppEntityを継承)と@AppEntity(.generable)マクロも同時に導入されました。
公式ドキュメントのフライト検索エンティティ(FlightSearch)を例にとると、@Propertyで各プロパティと自然言語の説明を宣言するだけで、モデルは事前のエンティティクエリ(Entity Query)を省略し、発話内容から直接パラメータオブジェクトを推論・生成します。
import AppIntents
@AppEntity(.generable)
struct FlightSearch: TransientAppEntity {
static let typeDisplayRepresentation: TypeDisplayRepresentation = "Flight Search"
@Property(description: "3-letter IATA airport code for departure")
var origin: String
@Property(description: "3-letter IATA airport code for destination")
var destination: String
@Property(description: "Departure date and time")
var date: Date
@Property(description: "Cabin class such as economy, business, or first")
var cabin: String
var displayRepresentation: DisplayRepresentation {
DisplayRepresentation(title: "\(origin) to \(destination)")
}
}
@AppIntent(.tool)
struct SearchFlightsIntent: ToolIntent {
static let title: LocalizedStringResource = "Search Flights"
@Parameter(title: "Search Criteria")
var criteria: FlightSearch
func perform() async throws -> some IntentResult & ReturnsValue<[FlightEntity]> {
let flights = try await FlightService.shared.search(criteria)
return .result(value: flights)
}
}ユーザーが「来週の金曜日にサンフランシスコからJFK空港へ飛ぶビジネスクラスの便を調べて」と話しかけると、Siri AIの言語モデルは「サンフランシスコ」と「JFK空港」を3文字のIATA空港コードであるSFOとJFKに自動変換し、「来週の金曜日」を具体的な日時に解決した上で、完全なFlightSearch構造体を動的にインスタンス化してSearchFlightsIntentへ渡し実行します。
対応4プラットフォームと要件
Appleは2026年11月3日に6つのOSの27.3 Beta 1を同時配信しましたが、サードパーティ開発者向けのSiri AIカスタム連携プレビューは現在、Apple Intelligence対応ハードウェア上で動作する4つのプラットフォームのみをサポートしています。
対象となるのは、iOS 27.3 Beta(ビルド番号24C5037i)、iPadOS 27.3 Beta(24C5037i)、コードネームGolden GateのmacOS 27.3 Beta(26C5035r)、およびvisionOS 27.3 Beta(24N5286r)の4つです。
同日配信されたwatchOS 27.3 Beta 1(24S5284h)では、Apple Watch Series 12およびUltra 4においてファーストパーティ製の音声インテリジェンス機能である「Siri Recap」と「Live Rewind」が初めて有効化されましたが、サードパーティ向けのToolIntentやGenerableEntity、評価フレームワークはwatchOSおよびtvOS(24K5286g)にはまだ対応していません。
開発環境としては、Swift 6.4コンパイラと27.3 SDKを内蔵したXcode 27.3 Betaが必要であり、開発用MacにはmacOS Tahoe 26.6以降が求められます。
二、オープンスキル仕様による連携
オープン標準と2段階読み込み
1つのアプリが十数個のツールインテントをSiri AIに公開すると、個別の関数シグネチャだけでは、複雑な業務手順の前後関係やパラメータ収集の順序を言語モデルが正確に把握することは困難になります。
そこでAppleは「アプリスキル」(App Skills)を導入し、複数のツールインテントを連携させる複合ワークフローの誘導、類似インテントの使い分け条件の明示、特定ドメインの前提知識の注入、およびユーザーへの複数ターンの聞き返しによる情報収集を記述できるようにしました。

注目すべきは、Appleが独自の閉じた設定ファイル形式を新造するのではなく、オープン標準であるAgent Skills仕様(https://agentskills.io/specification)のサブセットを直接採用すると公式ドキュメントで明言した点です。
開発者はXcode 27.3のメニューFile > New > File from TemplateからResourceカテゴリのSkills Bundleテンプレートを選択することで、Skills.skillsbundleディレクトリを生成でき、各スキルはSkills.skillsbundle/Skills/<skill-name>/SKILL.mdファイルとして配置されます。
1つのアプリターゲット(App Target)に含められるSkills.skillsbundleリソースバンドルは最大1つまでで、Siri AIはSKILL.md内のnameとdescriptionという2つのYAMLフロントマターフィールドおよびMarkdown本文のみを解析し、スクリプト(scripts)や参照ファイル(references)の同梱には対応していません。
多数のインストール済みアプリが存在する環境でコンテキストウィンドウの消費を抑えるため、AppleはSKILL.mdに対して厳格な2段階オンデマンド読み込み機構と文字数制限を設けています。
- スキル名(
name):必須項目で、1〜64文字の英小文字(a-z)、数字(0-9)、ハイフン(-)のみ使用可能です。先頭や末尾のハイフン、連続する2つのハイフン(--)は禁止されており、親フォルダ名と完全に一致させ、メインアプリ・App Extensions・埋め込みフレームワーク全体で一意にする必要があります。 - 第1段階の軽量フィルタリング(
description):必須項目で、上限1,024文字の1行プレーンテキストです。ユーザーからリクエストを受けると、Siri AIはまず各スキルのdescriptionフィールドのみを読み取って現在の意図に合致するかを判定するため、発動条件と適用シーンをこの1行に漏れなく記述する必要があります。 - 第2段階の本文注入(Markdown Body):上限10,000文字です。Siri AIが
descriptionに基づいて特定のスキルが該当すると判定した場合に限り、そのスキルのMarkdown本文がモデルのコンテキストに読み込まれ、複数ステップのインテント連携手順や聞き返しルールが参照されます。
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name: order-return-assistant
description: Handle customer requests to return delivered items, check return window eligibility within 30 days, and generate return shipping labels.
---
# Order Return Workflow
Use this skill when a person asks to return an item or exchange a recent purchase.
## Step 1 - Verify Eligibility
Before creating a return order, call `CheckReturnEligibilityIntent` with the target `OrderEntity`.
Only proceed if `isDelivered` is true and the delivery date is within 30 days.
## Step 2 - Collect Return Reason and Method
Ask the person why they are returning the item and whether they prefer a drop-off QR code or a printable label.
## Step 3 - Submit Return
Call `CreateReturnOrderIntent` with the verified order, reason, and preferred return method.
非決定的挙動とアトミック設計
初めてSKILL.mdに触れる開発者は、これを順番通りに実行されるスクリプト言語のように捉えがちですが、Appleは公式ドキュメントの目立つ警告枠で設計上の境界線を明確に示しています。
Appleは「アプリスキルを使って決定論的な動作を強制することはできません。Siri AIは自らの振る舞いを判断する参考としてアプリスキルを利用しますが、スキル内に列挙されたツールインテントを機械的に順番通り実行するわけではありません」と明記しています。
つまり、SKILL.mdが提供するのはあくまで言語モデルが推論するための柔軟なコンテキスト情報であり、モデルは対話の状況に応じて特定のステップを省略したり呼び出し順序を入れ替えたりする可能性があります。
もし業務ロジック上、2つの処理を決まった順序で不可分に実行しなければならない場合(例えばポイント減算とクーポン発行を分離できない場合や、返品受付の前に必ず不正検知チェックを通す必要がある場合)、それらを2つの独立したToolIntentに分けてSKILL.mdに委ねるのではなく、単一のツールインテントのperform()関数内でSwiftコードとして一括実装しなければなりません。
実機評価と5つの検証アサーション
大規模言語モデルの非決定的な出力に対するリグレッションテストの難しさを解消するため、Appleは27.3 Betaにおいて、Siri専用の自動対話評価フレームワークであるSiri Evaluationsを導入しました。
コーディング段階ではXcode 27.3内蔵の静的診断ツールSiri Integration Advisorが説明文の欠落やスキーマの競合を自動検出するほか、SwiftのTestingテストスイート内で複数ターンのユーザー入力(UserTurn)を含むテストシナリオ(SiriScenario)を記述できます。
SiriServiceと評価エンジン(SiriExpectationEvaluator)を通じて、テストコードから実際のSiriパイプラインへスクリプト化されたリクエストを送信し、以下の5つの主要指標に対して定量的なアサーションを実行できます。
Calls:対応する対話ターンにおいて、Siriが期待通りのAppIntentを正確に呼び出したかを検証します。Finds:Siriが期待通りのAppEntityを検索し、ユーザーへ提示できたかを検証します。Loads:SkillDefinition(name:)を用い、リクエスト処理時にSiriが指定のSKILL.mdスキルを正しく照合して読み込んだかを検証します。必須(.required)または推奨(.preferred)の設定が可能で、単一ターンの読み込み合格率(skillsLoadedPass)とシナリオ全体の合格率(skillsLoadedAllPass)を出力します。OnScreen:模擬的な画面コンテキスト状態を注入し、画面認識(Onscreen Awareness)の動作をテストします。SiriResponse:Siriが最終的に生成した自然言語の応答品質が期待に沿っているかを評価します。
なお、Appleの公式ドキュメントでは、App SkillsおよびSiri AIプレビュー連携はiOSシミュレータ(Simulator)でのテストに対応していないと明記されており、開発者はApple SiliconまたはA17 Pro以降のチップを搭載した実機にアプリをビルドして検証する必要があります。
また、現時点でビルドされたサードパーティ製Siri AI連携は、Xcodeのローカル開発署名ビルド(Development-signed builds)およびTestFlightの内部テスター(Internal TestFlight)でのみ動作し、外部TestFlightやApp Storeの製品版では2027年春の提出受付開始までシステムレベルで無効化されます。
三、アプリ名不要の呼び出しと連携
アプリ名を省略できる3つの文脈
従来の音声操作では、サードパーティ製アプリを呼び出すたびに「〇〇アプリで配車して」のようにアプリ名を明示的に発話する必要がありました。 しかし27.3 Betaではシステム状態とインテントルーターが密接に統合され、以下の3つのコンテキスト状態のいずれかに該当する場合、音声やテキストでアプリ名を指定しなくても、Siri AIが自動的に対象アプリへ指示をルーティングします。
- 対象アプリが画面のフォアグラウンド(Foreground)に表示されている場合:グルメ検索やショッピングアプリを閲覧中にそのまま絞り込みや注文を指示すると、
NSUserActivityと画面認識(Onscreen Awareness)モジュールが連携し、現在開いているアプリを直接操作します。 - 対象アプリのライブアクティビティ(
Live Activity)が有効な場合:例えば配車アプリの乗車状況を示すライブアクティビティがロック画面やDynamic Islandで動作している際、「Hey Siri、乗車場所を[新しい住所]に変更して」と話すだけで、その配車アプリの乗車地変更インテントが自動的に呼び出されます。 - 新しい独立型Siriアプリ(
Siri app)内で既存の対話を継続している場合:iOS 27で新設された独立型Siri appは、2列のカードレイアウトで対話履歴を管理しiCloud経由でデバイス間暗号化同期を行いますが、同じ対話カードの前のターンで特定のサードパーティ製アプリに言及していれば、続く質問や連続操作でアプリ名を繰り返す必要はありません。


アプリ間データ転送と保護境界
単一アプリ内の複数ステップ連携にとどまらず、27.3 Betaではアプリエンティティ(AppEntity)がコア転送プロトコル(CoreTransferableフレームワークのTransferable)に準拠することで、アプリをまたいだデータ抽出とアクションのリレーが可能になりました。
Apple公式が示す代表的なマルチホップの例として、ユーザーが「Hey Siri、[チャットアプリ名]でお気に入りのスニーカーをパートナーに送って」と話すと、Siri AIはまずショッピングアプリの検索インターフェースを呼び出して登録済みのスニーカーのエンティティを取得し、次にパーソナルコンテキストから「パートナー」の連絡先を特定した上で、スニーカーのデータを指定のチャットアプリへ引き渡して送信します。
AIエージェントがアプリを横断してデータを読み取り転送できるようになると、ロック画面状態でのプライバシー漏洩をいかに防ぐかが金融アプリやエンタープライズアプリにとって最重要の課題となります。 そのためAppleは、エンティティおよびプロパティの階層に2つのきめ細かなセキュリティ制御を用意しています。
- プロパティ単位の内部非公開化(
IntentVisibility.internal):エンティティ内にアプリ内部やウィジェット専用の機密フィールド(銀行口座エンティティBankAccountEntityにおける銀行ルーティング番号routingNumberなど)が含まれる場合、@Property(visibility: .internal)を指定することでそのフィールドをSiriやショートカットから完全に隠蔽し、口座のニックネームと残高のみを音声照会に公開できます。 - 3段階のロック解除認証ポリシー(
IntentAuthenticationPolicy):エンティティ全体、あるいは個別の@Property、@DeferredProperty、@ComputedPropertyに対して、ロック画面での直接アクセス許可(.alwaysAllowed)、デバイスのロック解除必須(.requiresAuthentication)、またはローカルの生体認証・パスコードによる強固な認証必須(.requiresLocalDeviceAuthentication)を設定できます。
ただし、同時公開された27.3 Beta 1のリリースノートを確認すると、初期ベータ版には見過ごせない2つの既知の不具合が記載されています。
iOSおよびiPadOS 27.3 Beta 1には問題番号190573761のセキュリティ関連の不具合があり、ロック解除を必要とするエンティティやプロパティを表示する前にデバイスのロック解除要求が正常に表示されない場合があるほか、macOS 27.3 Beta 1には問題番号191273925のインデックス不具合があり、サードパーティ製アプリがSpotlightに提供した非スキーマのカスタムエンティティがMac上のSiriから一時的に検索できない状態となっているため、機密データを扱う開発者は今後のベータ版での修正状況を注視する必要があります。
純正15アプリの先行刷新モデル
サードパーティ開発者への模範例として、Appleは27.3 Beta 1において、この新しいインターフェース群を用いてファーストパーティの純正アプリ15種類のSiri AI操作機能を大幅に強化しました。 対象となる15の純正アプリは、カレンダー(Calendar)、ファイル(Files)、Finder、ジャーナル(Journal)、メール(Mail)、マップ(Maps)、メッセージ(Messages)、ミュージック(Music)、メモ(Notes)、写真(Photos)、プレビュー(Preview)、リマインダー(Reminders)、Safari、ショートカット(Shortcuts)、および天気(Weather)です。

実際の操作において、これらの純正アプリには従来であれば複数階層のメニューを手動で辿る必要があった複合アクションが多数追加されています。
- ファイルとFinder:自然言語によるアーカイブ作成(Archive)や1年以上開いていない古いファイルのゴミ箱への移動、ファイル形式ごとのフォルダ自動整理、一括リネーム、およびファイル内容の直接抽出に対応しました。
- メッセージとメール:メッセージアプリでは音声によるiMessageの送信予約、送信済みメッセージの編集、送信取り消し(Unsend)、およびTapbackリアクションの送信が可能になり、メールアプリではマーケティングメールの一括配信停止や送信直後のメール取り消しに対応しました。
- Safari・写真・生産性ツール:SafariではURLリストからのタブグループ作成、トピック別のタブ並び替え、重複タブの一括クローズが可能になり、写真では音声による画像の回転補正やピープル・ペットアルバムの名前変更、ジャーナルとリマインダーではSiriを通じた音声文字起こしエントリーの作成と「緊急リマインダー」(Urgent Reminders)の作成に初めて対応しました。
四、25億回の推論コストと地域差
1日25億リクエストと利用上限
15種類の純正アプリと数百万本のサードパーティ製アプリが多段階推論とアプリ間連携に一斉に対応すると、クラウド上の大規模モデルの計算リソース消費は急激に増大します。
2026年11月2日に開催されたAppleの2026会計年度第4四半期決算説明会(同四半期の売上高は前年同期比12%増の1,145億ドル)において、新最高経営責任者(CEO)のジョン・ターナス(John Ternus)氏は、Siriが現在処理しているリクエスト数が1日あたり25億回(2.5 billion requests a day)を超えていることを明らかにしました。
最高財務責任者(CFO)のケバン・パレク(Kevan Parekh)氏も同説明会で明確なコスト構造を示しており、デバイス上のチップで完結するオンデバイス推論は非常に高効率で限界費用がほぼゼロである一方、サーバーサイド推論は実質的な計算コストを伴い、サービス部門の売上原価に直接計上されます(Appleは2026年12月期の連結売上総利益率を45%〜46%と予測しています)。
こうした背景から、Appleは11月3日の開発者向け発表の末尾および公式サポート規約(ドキュメント番号HT148587)において、クラウド推論の1日あたり利用上限と将来的な有料拡張の仕組みを正式に明文化しました。
公式規約によると、サーバーサイドモデル(Server-side models)に依存して動作するApple Intelligence機能にはすべて1日あたりの利用上限(Daily usage limits)が適用され、具体的にはSiri AI、写真のインテリジェント編集ツール(クリーンアップClean Up、画像拡張Extend、空間再構図Spatial Reframingを含む)、Image Playground、ショートカット内のAFM 3 CloudおよびAFM 3 Cloud Proモデル、ならびにサードパーティ製アプリが呼び出すプライベートクラウドコンピュート(Private Cloud Compute)の基盤モデルが対象となります。 1日の上限は利用する機能、リクエストの複雑さ、システムのリアルタイム負荷に応じて動的に変動し、当日の無料枠上限に達したユーザーはリセットまで待機する必要がありますが、Appleは「将来的に、より多くの容量を利用できる拡張アクセス権の有料提供を予定している」と明言しています。

同一ビルドに潜む世界3地域の差
多言語対応の面では、Siri AIは2026年9月のiOS 27.0で英語からスタートし、10月26日のiOS 27.2でフランス語、日本語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語が追加されたのに続き、今回の27.3 Betaサイクルで新たに繁体字中国語、ノルウェー語、トルコ語、ベトナム語への対応が発表され、対応言語は計10言語に達しましたが、ドイツ語と簡体字中国語は依然として含まれていません。
さらにグローバル展開を行う開発者やユーザーが把握しておくべき重要な事実は、同じiOS 27.3 Beta 1(ビルド番号24C5037i)のファームウェアでありながら、世界の市場が実際には大きく異なる3つのトラックに分かれて動作している点です。
| 比較項目 | 北米・日本・アジア太平洋等の対象市場 | 中国本土市場(中国国内版) | 欧州連合(EU)加盟国市場 |
|---|---|---|---|
| AI世代の位置づけ | iOS 27の新世代Siri AIとApple Intelligence | 第1世代Apple Intelligenceと従来のSiri拡張 | モバイル端末ではSiri AI未開放 |
| クラウド連携モデル | Appleクラウドモデル+Google Gemini連携 | アリババ通義千問(Qwen)大規模モデル | MacとVision ProのみAppleクラウド対応 |
| アプリ連携App Skills | @AppIntent(.tool)とSKILL.mdに対応 |
新世代Siri AIとApp Skillsに非対応 |
macOS 27.3とvisionOS 27.3のみ対応 |
| 独立型Siriアプリ | カード型Siri appを搭載(iCloud同期対応) |
独立型Siri appは非搭載 |
iOS・iPadOS・watchOSともに利用不可 |
| ハードと容量の要件 | Apple Intelligence対応の全互換デバイス | 中国版iPhone 15 Pro以降、約9.5GBのモデル取得が必要 | EU域内のMacおよびVision Proのみ |
2026年10月31日にAppleとアリババ(Alibaba)の提携が公式発表・承認されたことを受け、中国本土モデルのデバイス(iPhone 15 Pro以降で地域設定を中国本土にし、中国のApple IDでサインインした上で約9.5GBのオンデバイスモデルパッケージをダウンロードする必要があり、公式は15GBの空き容量を推奨)では、11月4日未明に配信されたiOS 27.3 Beta 1で「中国版Apple IntelligenceとSiri」のテストが開始され、2026年12月の正式版で一般提供される見通しです。
しかし実機検証の結果、中国本土版でiOS 27.3に搭載されたのは、海外のiOS 18.1〜iOS 26世代に相当する第1世代Apple Intelligenceの基本機能群(作文ツール、写真のクリーンアップ、ライブ翻訳、通知の要約、およびアリババのQwenと連携してテキストや画像の質問に答える従来のSiri)であり、Google Geminiのクラウド推論基盤を軸に再構築された海外版の新世代Siri AIや独立型Siriアプリ、そして今回開放されたアプリ間連携App Skillsは含まれていません。
開発者が今すぐ進めるべき準備
2026年11月3日のデベロッパープレビュー開始から、数カ月後のユーザー向け初期展開、そして2027年春のApp Store提出受付開始まで、Appleは世界中のサードパーティ開発者に約4〜5カ月間の実装期間を用意しています。 初期のSiriKit以来最大規模となるこのシステム級AIエージェント刷新に向けて、開発チームは以下の3つのステップで対応を進めるのが効果的です。
- 価値の高い独自アクションを洗い出し
@AppIntent(.tool)へ移行する:これまで13種類のスキーマに合致せず公開できなかったアプリの中核機能(注文ステータスの変更や専門分野の複合検索など)を選定し、@AppEntity(.generable)で自然言語のパラメータ抽出を簡素化しつつ、決済やプライバシーに関わる処理は単一のperform()関数内にまとめてアトミック性を確保します。 SKILL.mdの1,024文字のdescriptionと実機評価テストを磨き込む:Siri AIは第1段階でdescriptionのみを見てスキルの読み込みを判断するため、発動条件の境界を明確な動詞と業務用語で簡潔に記述し、Apple SiliconまたはA17 Pro以降を搭載した実機上でSiri Evaluationsを回してskillsLoadedPass指標を継続的に検証します。- 地域別の分岐対応とクラウド上限到達時のフォールバックを備える:日本や北米などの市場と中国本土やEU市場の双方へアプリを配信する場合は、新世代Siri AIのツール呼び出しと従来のショートカット連携をコードレベルで適切に分岐させるとともに、ユーザーが1日のクラウド利用上限に達した際にもローカルの基本機能で処理を完結できるフォールバック体験を設計しておく必要があります。
よくある質問 FAQ
Q:サードパーティ開発者が今@AppIntent(.tool)やApp Skillsを実装した場合、いつApp Store経由で一般ユーザーに提供できますか?
現在、Siri AIのサードパーティ連携はXcodeのローカル開発署名ビルドとTestFlightの内部テスター(Internal TestFlight)でのみ有効となっており、外部TestFlightやApp Storeの公開版ではシステムによって無効化されています。
Appleの公式計画では、数カ月後にエンドユーザー向けの初期体験を提供開始し、2027年春(Spring 2027)にApp Storeへの審査提出受付を正式に開放する予定です。
Q:iOS 27.3 Beta 1で有効化された中国本土向けの「Apple IntelligenceとSiri」には、今回開放されたアプリ間連携App Skillsは含まれていますか?
含まれていません。中国本土版がiOS 27.3 Beta 1で対応したのは、アリババの通義千問(Qwen)モデルと連携する第1世代Apple Intelligenceの基本機能(作文ツール、写真のクリーンアップ、通知の要約など)です。
日本や米国などでiOS 27から導入された新世代Siri AIや独立型Siriアプリ、およびアプリ間連携App SkillsはGoogle Geminiのクラウド基盤と深く統合されており、現時点では中国本土版には提供されていません。
Q:XcodeのiOSシミュレータ上でSKILL.mdのアプリスキルやSiri Evaluationsの自動テストスクリプトを実行できますか?
実行できません。Appleの公式ドキュメントでは、アプリスキルおよびSiri AIプレビュー版はシミュレータ(Simulator)での動作に非対応であると明記されています。
開発者はApple SiliconまたはA17 Pro以降のチップを搭載したApple Intelligence対応の実機にアプリをデプロイして、デバッグおよび評価テストを行う必要があります。
Q:SKILL.mdの記述によって、Siri AIに複数のツールインテントを必ず1・2・3の固定順序で呼び出すよう強制できますか?
強制できません。SKILL.mdはあくまで言語モデルが推論の参考にするコンテキスト情報であり、Siri AIがドキュメント内の各インテントを機械的に順番通り実行する保証はありません。
もし業務ロジック上、2つのアクションを不可分な固定順序で実行する必要がある場合は、単一のToolIntentのperform()関数内でSwiftコードとして直接統合して実装してください。
参考資料と情報源
- Apple Developer News:Siri AI is now open to all developers(2026-11-03)
- Apple Developer Documentation:Siri AI Developer Preview(2026-11-03)
- Apple Developer Documentation:Bringing custom actions and content to Siri(2026-11-03)
- Apple Developer Documentation:Orchestrating complex actions with app skills(2026-11-03)
- Apple Developer Documentation:ToolIntent & GenerableEntity API Reference(2026-11-03)
- Apple Developer Documentation:Siri Evaluations Framework & Loads Expectation(2026-11-03)
- Apple Developer Documentation:iOS & iPadOS 27.3 Beta Release Notes(2026-11-03)
- Apple Developer Documentation:macOS 27.3 Beta & Xcode 27.3 Beta Release Notes(2026-11-03)
- Apple Newsroom:Siri AI, a profoundly more capable and personal assistant, is here(2026-09-14)
- Apple Support:Apple Intelligence Usage Terms HT148587(2026-09-09)
- 9to5Mac:Developers can now create advanced 'app skills' for Siri AI(2026-11-03)
- MacRumors:iOS 27.3 Beta Brings Apple Intelligence to China(2026-11-03)
- TechRadar:Apple confirms plans to charge for expanded Siri AI access(2026-11-03)
- ShiftDelete.Net:Siri AI Usage Limits Coming as Apple Plans Paid Access(2026-11-03)


